令和元年6月28日
九州農業食料工学会 会員各位
九州農業食料工学会
学会長 田中 史彦
(九州大学大学院農学研究院)
九州農業食料工学会会員の皆様におかれましては、益々ご活躍のこととお慶び申し上げます。
この度、令和元~2年度の農業食料工学会九州支部長を務めることになりました。農業食料工学会九州支部は、1950年の発足し、農業食料工学会の支部としては最も長い歴史と伝統を持つ組織で、来年度には創立70周年を迎えます。この間、九州を中心に全国の農業機械学や農産機械学分野の発展、近年では食料・食品工学分野やIT・メカトロニクス分野、バイオマス分野の発展に寄与してきました。これまで本支部のリーダーとしてご活躍いただきました歴代支部長のご功績に対しまして敬意を表しますとともに、本責務を全うするにあたり、会員の皆様には倍旧のご厚情を賜りますことを切にお願い申し上げます。
周知の通り、農業食料工学会は本年度より任意団体から一般社団法人へと移行し、新たなスタートを切りました。これまで、農業食料工学会の下部組織として活動してきた九州支部は、ある意味では独立した団体として切り離され、独自に今後を見通す必要性に迫られています。つまり、これまでは支部規約を変更する際は、規約第10条のうち「農業食料工学会理事会の承認を得なければならない」との文言が支部を縛っておりましたが、これが削除され、より自由度の高い活動も可能となるということです。よって、規約の大幅な見直しも可能です。場合によっては、規約の変更のみならず支部名称自体の変更も検討していく必要があろうかと考えます。九州支部がこれまで以上に機能するため、この2年間で規約や組織の整備等に努め、さらには次の10年、すなわち、創立80周年時を視野に入れたロードマップを皆様とともに考案していければと考えております。特に、近年は農研機構を中心にスマート農業プロジェクトやスマートフードチェーンプロジェクトなど農業食料工学分野に密接に関連する事業が全国で展開されています。さらには、SDGs(Sustainable Development Goals)に基づく持続可能な開発を意識した取り組みもなされています。我が国の市場が縮小する一方で、アジアの市場は拡大し続けており、これから人口ボーナス期を迎える市場性の高い国々が近隣に多く存在する点は日本の強みです。急速な高齢化と人口減少を一度に経験する国は日本が最初であり、この舵取りには世界中が注目しています。我が国がこの危機的状況を乗り切る手段としては、高付加価値・高所得経済へのシフト、市場拡大を目指した輸出重視の戦略がキーワードになります。質の高いものをいかにしてアジア市場に大量に供給し、経済成長を続けていくか、これは農業にも求められることです。このための技術的支援を行う潜在力が九州支部にはあると確信しています。九州沖縄地区の独自性や長所を生かし、国内はもとより、アジア市場、延いては世界に高品質で安全な日本の農産物や食品を供給するための生産・流通要素技術と一貫体系についての研究開発を行うことはもとより、今後の支部の方向性や在り方を、シンクタンクとなる幹事会や支部長自らが主体となり運営する小委員会を設置し、議論して行ければと考えています。
また、一方では、これまで採用されてきた委員会制度を踏襲し、企画委員会、会員拡大委員会、人材育成委員会、国際交流委員会を設置することで、支部活動の活性を高めていきたいと考えています。具体的には、企画委員会では、公開シンポジウムでは支部の活動を会員内外に公表し、支部のポテンシャルを示していきたいと思います。会員拡大委員会では従来の農業機械系の会員に加え、ITや食品系の分野にも会員であることのメリットを明確に示すことで組織の充実を目指したいと考えています。人材育成員会では、学生の自由な発想と創造力を競うアイデアコンテストを開催し、これがあったらいいなというドラえもんの道具を科学するような斬新なアイデアを若い世代を中心に発想頂くことも引き続き継続していくことが大切かと思います。また、定評のある卒論生強化合宿を継続するとともに、国際交流委員会と連携して留学生を対象としたサービスや大学院生の国際交流イベントの開催についても検討していければと考えています。国外に会員の分母を拡げることは、新たな留学生の呼び水となりますし、本部に先行した海外学術交流拠点作りに役立ちます。将来的には帰国留学生を主体とする国際共同イベントも企画しやすくなりますし、海外進出を目指す関連企業へのサービスにもつながります。我が国の若年人口が減る中において、国際化は不可欠な重点ポイントです。その他、支部会員で取り組むプロジェクト研究等についても支援ができればと考えています。現在でも産官学の連携で大型の外部資金を獲得されている会員の方が多数いらっしゃいますので、これらの方々のご経験を支部のボトムアップのためにご還元いただければと願います。加えて、来年度の支部創立70周年記念に向けた事業計画も同時に進行して行きたいと考えております。
委員会の設置や検討事項等、必要に応じてスピーディに対応し、支部が発展するための最大限の可能性を想定した上で将来を探り、これを実現するために皆様にご相談することも多々あろうかと思いますが、是非、ご協力願います。